パッタイの世界

完全なる自己満足サイト

テーマ「笑いながら」

彼は泣きそうな顔で笑いながら言った。
ごめんね、と。
ずっとずっと君のことを想い続けてきた。
でももうこれで最後だ。
ずっとずっと沈め続けていたのに。
報われない恋心は深く深く奥底に
ぐいぐいと押し沈めて
もう二度と浮かばないように
ぐいぐいと。ぐいぐいと。
押し沈めて、押し沈めて。
押し沈め続けてきたのに。
たった一瞬の油断が
押し沈めていた力をすり抜けて
ぐんぐんと上へ上へ進んで
ポンっと浮かんでしまった。

彼は泣きそうな顔で笑いながら言った。
きもちわるいでしょう、と。
ずっとずっと君のことを想い続けていた。
浮かんでしまった恋心を
君は嫌悪の表情を向けてきた
そんなつもりはなかった、と
君は言うけれど。
もう無理なんだ。もう駄目なんだ。
浮かんでしまったソレをまた沈める力もない
浮かんでしまったソレをずっと沈める力もない
みられたくなった君にみられちゃったから。
もうおしまいだ。もうおわりだ。
ぼくは消えるよ。君の世界から。
ぼくは消えたい。君の世界から。
また次生まれ変わって、
きもちわるくない関係だったらいいのになぁと。
最後にポツリ呟いて
ぼくはさよならした。

テーマ「暗い海の底で」

沈む。沈む。沈んでゆく。
暗い暗い海の底へと
ゆっくりとゆっくりと
落ちるように堕ちるように
空から差し込む光を眺めながら
遠ざかってゆく光を見つめながら
絶望の眼差しで世界に別れを告げた。

沈む。沈む。沈んでゆく。
暗い暗い海の底へと
ゆっくりとゆっくりと
落ちるように堕ちるように
先の見えない闇を眺めながら
近づいてくる暗闇を見つめながら
希望の眼差しで世界に別れを告げた。

沈む。沈む。沈んでゆく。
暗い暗い海の底へと
ゆっくりとゆっくりと
落ちるように堕ちるように
青から黒へ変わるグラデーション
2人きりだけの世界の中
静かにゆっくりと沈んでゆく。

しあわせ。

しあわせ。しあわせ。

いっしょにごはんをつくって。

いっしょにごはんたべて。

いっしょにてれびをみて。

いっしょにげーむをして。

いっしょにねて。

いっしょにおきて。

そしていっしょにいえをでる。

そんななんでもないいちにちがとてもしあわせ。

 


しあわせ。しあわせ。

おはようっていっておはようっていう。

いってきますっていっていってらっしゃいっていう。

ただいまっていっておかえりっていう。

そしてきょうのおはなしをする。

わらいあってふたりでくつろいで。

そんななんでもないいちにちがしあわせ。

わたしは悪くない

わたしは悪くない。あいつが悪い。あいつが騙すから。わたしは悪くない。

いいえあなたも悪いんです。騙したその子も悪いけれど、あなたも悪いんです。
なぜ。わたしは騙されたのに。わたしは悪くない。
いいえあなたも悪いんです。なぜわたしがあなたも悪いと言うのかわかりますか。
わからない。なぜわたしが悪いの?わたしは騙されたのに。
あなたの罪を理解していないのですね。あなたはあの子に何をしましたか。
あの子に……。でもあれは。あれは。騙されたから。あいつが騙さなければ。わたしは騙されたの。
その子を信じたのは誰?あの子を信じなかったのは誰?どちらを信じるか決めたのは誰?
それは。それは。でも。でも。
決めたのはあなた。その子を選んだのもあなた。それなのにその子だけが悪いんでしょうか。
でも。でも。騙されて。でも。
暴力を、振るうと決めたのも、あなた。
………………。
あの子を故意的に傷付けようとしたのも、あなた。
………………。
あの子の噂を広めたのも、あなた。
……………………。
あなたも悪いんです。その子だけじゃない。
……。

思い立った日が吉日

思い立った日が吉日と人は言う。

だからぼくは思い立ったらすぐに実行していた。

ケーキが食べたいなって思ったらケーキを買って食べた。

ドライブがしたいなって思ったらドライブしに行った。

思い立った日が吉日と人は言う。

人を殴りたいなって思ったから人を殴った。

人を殺したいなって思ったから人を殺した。

ぼくは変なことしてないよ。

ぼくは普通のことしたんだ。

どうしてぼくは責められるの?

ぼくは普通のことをしたんだ。

みんなみんなみんなやってるじゃないか。

ほら、テレビでもニュースされてる。

人が死んだって。殺されたって。

普通のことじゃないか。

悲しいけど、普通のことじゃないか。

小さな世界

学校とは小さな世界だ。

狂った小さな世界。

この小さな世界は狂っていた。

だけど小さな世界に住む人々は狂っていることに気づいていなかった。

狂っていることこそが普通なんだと。

誰もがそう信じていた。

この世界には犯罪者はいない。

この世界には犯人はいない。

だけど世界は混沌としている。

強姦。虐め。暴力。

日常的に行われているそれらをこの小さな世界に住む人々は普通のことだと信じている。

この世界には犯人はいない。

この世界には犯罪者はいない。

そして全員が犯人で犯罪者だった。

だけど小さな世界に住む人々は信じていた。

僕は犯人じゃない。

僕らは犯罪者じゃない。

これが普通なんだからと。

そして彼らは小さな世界を飛び立った。

大きな、大きな世界へと。

そして彼らは知った。

自分の罪を。自分の罪状を。

僕は犯人だった。

僕らは犯罪者だった。

罪悪感をひっそりと胸に秘めて生きていく。